全国に複数店舗を構える企業は、店舗それぞれでSNS運用を任せている企業も多いのではないでしょうか。SNSが店舗の集客やブランド認知のマーケティング活動に必須になった一方で、本部が全店舗のSNS運用状況を正確に把握できていないという課題は、今や多くの企業が直面する悩みとなってきています。
そこで本記事では、具体的な店舗別のSNS運用実態調査方法を3ステップで解説していきます。店舗単位でSNSの実態把握ができていない担当者様は、ぜひ自社でのSNS運用実態調査をする際に参考にしてください。
目次
なぜ店舗任せのSNS運用は危険なのか?
SNSはブランドの世界観を表現し、集客やファン顧客の獲得に重要なチャネルです。特に複数店舗を展開する企業では、店舗ごとにSNSアカウントを持ち、地域や客層に合わせた発信を行うことが当たり前になっています。店舗独自の魅力を伝えることで共感を呼び、ロイアリティの高い顧客を創出することができる一方で、SNS運用を現場任せにしてしまうことでブランド価値を揺るがすデジタルリスクも同時に高まります。
SNSが企業の信頼を大きく揺るがす時代となった今、本部が店舗のSNS運用を把握・管理できていない場合、どのようなブランド毀損のリスクが起こり得るのか、その実態と対策について見ていきましょう。
本部が各店舗のSNSを管理できていないことによって発生するトラブル

本部が各店舗のSNSの運営状況を把握できていないのは、デジタルリスクの危機管理が全くできていないのと同義です。各店舗のSNS運営について十分に本部が管理していなかった場合、本部に報告が上がってこなかっただけで水面下ではデジタルリスクが起きていた可能性があり、店舗の判断で対応されていた可能性があります。今後の為にも過去にそのようなことがあったのか各店舗に調査をし、改善するべきです。
1.無許可で勝手に始めたアカウントが存在している(シャドーアカウント問題)
従業員が勝手にSNSアカウントを作成し、まるで企業代表かのような発信をしている可能性があります。定期的にアカウントの棚卸しや、そのようなアカウントがないかのモニタリングを行いましょう。
2.担当者のセンスに依存したSNS運用がもたらすブランド毀損
企業としての指導やSNS研修がないままの担当者任せの運用では、SNS炎上やブランド毀損などのリスクが高まります。SNSがブランドの“顔”となる時代において、担当者のセンスや個人の感覚に依存した運用は、思わぬブランド毀損や炎上リスクを引き起こす可能性があります。
- ・SNS投稿の質に統一感がない
- 投稿ごとにデザインや語り口調がバラバラで、統一感がなくユーザーが混乱する
- ・担当者個人の意見や価値観が強く反映された投稿
- 無意識に差別的な表現と捉えられ炎上の発端になる可能性があり、店舗SNSでの投稿は企業全体の意見として捉えられる
- ・バズ狙いの奇抜なコンテンツを発信
- 企業の世界観にそぐわない投稿は、一時的な注目を集めることはできたとしても、ブランドの品位を下げる可能性がある
3.店舗SNS運用で担当者が属人化している可能性
SNS運用を一人で行い、個人の判断だけでユーザー対応を行うことはSNS炎上に繋がる危険性が高いです。個人の軽率な判断で投稿やコメントへの返信を行っていては、ユーザーにとっては攻撃的・無神経だと受け取られ炎上拡散し、店舗のSNSだったとしても、企業全体の信頼失墜につながる危険性があります。
SNS運用担当者が属人化するデメリット
- ・軽率な発信が差別的・侮辱的・不適切と受け取られ、炎上に発展する可能性がある
- ・担当者の不在時や退職時にSNS運用業務が停滞してしまう
- ・運用担当者が変わるたびにトーン&マナーが変わり、ユーザーに不信感を与える
- ・即座に情報共有や相談先がないため、運用担当者の独断でSNS上のトラブルが悪化する場合がある
- ・コメント対応や炎上拡散されていることに気づくのが遅れる
- ・企業アカウントで誤ってプライベートな内容を発信してしまった際など誤爆に気づくのが遅れる
4.SNS上でのトラブルの存在が本部まで報告されない
店舗単位でSNS運用を任せていると、本部へ報告する必要がないと感じ、各店舗の責任者判断で問題解決していた可能性があります。
5.更新されていないアカウントが放置される
更新が止まったSNSの放置は、ブランドの信頼感を損なう原因になります。また、SNS運用が属人化されていると、引き継ぎがうまくいかず、アカウントが放置されるリスクも高まります。
更新されていないSNSをユーザーが見た際の企業イメージ毀損
- ・「この会社、ちゃんと営業しているのか?」とユーザーを不安にさせてしまう
- 最終更新日が古いほど、特にスタートアップ企業や中小企業だと倒産や撤退を連想させてしまう可能性
- ・ユーザーサポートが雑な印象に
- 「DMやコメントで問い合わせても帰ってこなさそう」とユーザーサポートが雑な印象を抱かせてしまう
- ・SNSを使いこなせていないというデジタルに弱い印象
- 特に若年層ユーザーには、時代遅れとマイナスな企業イメージを与えてしまう
- ・競合企業と比較され魅力が薄れる
- 企業としてやる気のない印象になり、選ばれない理由になる
店舗の顔であるSNSの運用が疎かになっていたり、ユーザーの信頼を裏切るような発信があっては、ブランドイメージがマイナスとなり、ファンの獲得どころか、顧客離れの原因にもなります。顧客ロイヤルティを高められるようなSNS運用が各店舗でしっかりと実施されているかや、企業ブランドのイメージと乖離していないかを本部で確認できる体制でなければいけません。
店舗単位でSNS運用の実態を調査するための実践ステップ
複数ある店舗アカウントの運用状況を把握せず、店舗任せの運用をしていては、SNS炎上やブランド毀損に繋がってしまう恐れがあることを説明してきました。そこでまず重要なのが、店舗全体のSNS運用の状態を“見える化”する「SNS運用実態調査」です。各店舗へのアンケートと直接のヒアリングで店舗が持つSNS運用の悩みや実態のリアルを調査していきましょう。
step1.店舗別SNS運用実態調査アンケート
まず、本部が取り組むべきは、現状のSNS運用実態の把握です。
全店舗に対してSNS運用に対するアンケートを行い、存在するアカウントの洗い出しや各店舗のSNS運用の実情を把握しましょう。
アンケート調査項目の例
- ・店舗で運用しているSNSの種類とアカウント名フォロワー数(アカウントの棚卸)
- ・SNS運用担当者は決まっているか?(社員・アルバイト)
- ・投稿頻度(週に●回、投稿曜日は決まっている、手が空いた時に投稿する)
- ・最終更新日
- ・会社のPCやスマホから投稿or個人のスマホから投稿
- ・店舗独自で投稿ルールは存在するか?それはどのようなルールか?
step2.店舗別SNS運用ヒアリング
店舗のリアルなSNS運用に関する声を聴くためにヒアリングを実施し、店舗の人間と共に寄り添ったSNS運用の整備をしていきましょう。
- ✓現場のリアルな運用の悩み
- ✓成功事例について、どのようなコンテンツを作成しているか
- ✓投稿をする際はダブルチェックなど複数人での承認フローはあるか?
- ✓従業員や顧客が写った写真を投稿する際の許可はとっているか?
- ✓SNSでトラブルになったことやなりかけたことはあるか?
step3.運用レベルに合わせたSNS運用サポート
店舗ごとのSNS運用に対する温度差を可視化し、レベルに応じた運用支援を行いましょう。
運用レベル | 運用支援 |
---|---|
積極的に運用している店舗 | 全店舗向けに成功事例として共有 |
なんとなく運用している店舗 | 投稿例や素材のテンプレをを配布してSNSの更新負担を軽減 投稿スケジュール策定 モチベーションの支援 |
アカウントはあるが放置している店舗 | 更新ができない理由のヒアリング SNSの意義を共有 ツールの使用方法のレクチャー |
ソーシャルメディアガイドライン再策定の勧め
投稿の質を一律に担保し、SNS運用におけるレベルのばらつきを解消するには、ブランドとしての指針となるソーシャルメディアガイドラインの策定が不可欠です。
ソーシャルメディアガイドラインとは?
ソーシャルメディアガイドラインとは、社内向けにSNSの運営や利用において、企業が持つブランドイメージ、利益、信頼性を保つための行動基準を社内向けに示したものです。
商品やサービスのコンセプトや届けたいターゲット層などブランドとしての指針と、企業としてどのようなスタンスでSNS発信を行うのか、ユーザーとのコミュニケーションをどのように設計するのかなど、その基本方針を明文化することで店舗ごとに複数のSNSアカウントがあったとしても、投稿内容に一貫性を持たせ、ブランドイメージを守ることができます。
ソーシャルメディアガイドラインの中身
ソーシャルメディアガイドラインは企業方針などによってカスタマイズしていくことが大切です。SNS運用実態調査を基に、ガイドラインに盛り込むべき要素を入れていきましょう。
ソーシャルメディアガイドライン記載例
- ✓アカウント開設時のルール
- ✓してはいけない炎上につながる投稿表現
- ✓トーン&マナーの統一
- ✓画像使用時の注意点
- ✓コメントへの返信方法
- ✓トラブル発生時の基本原則
ソーシャルメディアガイドラインの雛形をご用意していますので、ぜひダウンロードして自社に合わせてカスタマイズしてみてください。
ソーシャルメディアガイドラインは定期的な見直しが不可欠
SNSの環境は常に変化するため、定期的にガイドラインを確認し、必要に応じて更新することが重要です。また、新しいSNSが誕生した際や開設した際や新入社員が増えた際にも、リスクが変化する可能性があるため、注意が必要です。担当者は定期的に現場の人間にヒアリングを行い、常に最新の情報を把握し、ガイドラインが形骸化しないように更新と啓蒙をしていきましょう。
まとめ
複数店舗を展開する企業にとって、本部が各店舗のSNS運用実態を把握しておくことは、ブランドを守るうえで欠かせないものとなりました。まずは、SNS運用実態調査のstepを参考に、実際の各店舗のSNS運用実態を見える化してみてください。
また、SNS炎上やブランド毀損などのリスクを回避するためにも、ソーシャルメディアガイドラインの定期的な見直しと整備がますます重要視されるようになりました。
ソーシャルメディアガイドラインの見直しをする際にすぐに使える項目を雛形としてまとめた「ソーシャルメディアガイドラインの雛形」を無料でダウンロードできます。是非、自社で必要なエッセンスも盛り込んでソーシャルメディアガイドラインを更新していってください。
