【入門編】SNSの著作権マニュアル|著作権侵害の事例と対策を解説

SNS運用を行う企業は近年増えていますが、投稿の際に気を付けなければならないのが「著作権侵害」です。知らず知らずのうちに著作権を侵害してしまうこともあり、民事訴訟や刑事訴訟に発展するケースも…。そこで本記事では、SNSでの著作権や著作権侵害の基準・事例、また企業での著作権侵害を防ぐための対策までわかりやすく解説いたします。

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そもそも著作権とは?

著作権とは、文芸や学術、音楽などオリジナルティのある創作物を保護するための権利のことです。著作権制度は、著作物を生み出す著作者を守ることで、日本の文化が発展することを目的として作られた制度です。

どんなものが著作権になるの?

では、どのようなものが「著作物」として保護されるのでしょうか?定義として著作物は以下のような条件に当てはまるものとされています。

1. 思想または感情を伴ったものであること

「思想または感情」とは、人間によって生み出された考え方や感じたものを指します。例えば監視カメラのような自動的に撮影される機械などは、たとえそれが人間によって設置されたモノだとしても、撮影されたデータは著作物とは認められません。また「単なる事実やデータ(人間の思想や感情を伴わないもの)」も著作物にはなりません。

2. 創作物であること

他人の作品を「模倣」したものは著作物にはなりません。ここでいう「創作」とは、創った人の個性が多少なりとも表されていることを意味します。ありふれたものや創作の余地がないもの(短いスローガンなど)は著作物の対象とならない場合があります。

3. 表現されたものであること

「アイデア」など実際に表現されていないものは著作物から除外されます。頭の中で考えたアイデアやイメージは、表現として表に出ることではじめて著作物となります。

4. 文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものであること

著作物は分類上、下記の通りになります。大量生産される「工業製品」や、国や政府による条例や通達、判決などは著作権には該当しません。

言語の著作物講演・論文・レポート・作文・小説・脚本・詩歌・俳句など
音楽の著作物楽曲・楽曲に伴う歌詞など
舞踊・無言劇の著作物日本舞踊・バレエ・ダンス・舞踏・パントマイムの振り付け
美術の著作物絵画・版画・彫刻・マンガ・書・舞台装置・茶碗・壺・刀剣等の美術工芸品
建築の著作物芸術的な建築物
地図・図形の著作物地図・学術的な図面・図表・設計図・立体模型・地球儀など
映画の著作物劇場用映画・アニメ・ビデオ・ゲームソフトの映像部分などの「録画されている動く影像」
写真の著作物肖像写真・風景写真・記録写真など
プログラムの著作物コンピュータ・プログラム

(注)著作物として保護されるためには、「映画の著作物」を除き、「固定」(録音・録画・印刷など)されている必要はありません。そのため、「原稿なしの講演」や「即興の歌」なども保護の対象となります。 

SNSにおける著作権侵害

昨今のSNS利用の高まりにより、SNS上でも多くの著作権侵害が起きています。知らず知らずのうちに他者の著作物を無断利用してしまっているということもあるかもしれません。

著作権侵害はどこから?著作権侵害の判断基準

著作権侵害の判断基準となるのは、「類似性」「依拠性」という2つの視点です。

依拠性既存の著作物をもとに創作・複製したかどうか
類似性後発の作品が既存の著作物と同一または類似しているかどうか

この2つが伴って認められる場合に著作権侵害が認められます。「参考にしたものの結果的に似ていない」「たまたま似てしまったが、その著作物を知らず参考にもしていない」といった場合には著作物と認められません。

SNSにおける著作権侵害の例

ではSNS利用時に起こりうる著作権侵害にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは4つご紹介します。

1. 顔写真や映り込み

1つ目は顔写真の無断掲載です。自分の顔写真であれば問題ありませんが、他人の顔写真を掲載する場合は本人の許諾を得なければなりません。また芸能人などであっても、写真を無断で投稿やアイコンに使えば著作権侵害となります。人物写真の場合は、著作権侵害だけでなく、肖像権の侵害にもなるため特に注意が必要です。

また動画を撮った際に周辺にいた人や著作物であるキャラクターなどが映り込んでしまった場合も、原則として著作権侵害になりえます。しかし、映り込んだ著作物が小さく識別が難しい場合や不鮮明である場合には著作権侵害と認められない場合もあります。

2. 画像やテキストの無断転載

他人の作成した画像や他人の投稿を無断転載した場合も著作権侵害となります。競合アカウントの投稿やバズっている投稿などを参考にする分には良いですが、酷似した投稿になってしまうと著作権侵害になる場合もあるため、気を付けましょう。

3. アーティストの楽曲

アーティストの楽曲ももちろん著作物ですので、無断利用は原則、著作権侵害となります。ただし、InstagramやTikTok、YouTubeなどのSNSでは、JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)と利用許諾契約を締結しているため、アーティストの楽曲をアップロードしても問題ありません。一方でX(旧Twitter)は利用許諾契約を行っていないため、直接動画で楽曲を使うなどの行為は著作権違反となりますので注意が必要です。

4. ロゴの無断利用

会社や組織、商品ブランドなどブランドイメージを視覚的に伝えるロゴですが、こちらも著作物となるため無断利用は著作権違反となります。ロゴが商標登録されているものであれば商標権侵害にも該当します。

YouTubeやInstagramなど中には「ブランディングガイドライン」を設けている企業もあり、このガイドラインに沿って使用すれば許可なしでも利用できます。ロゴを使用したい場合には、ブランドガイドラインがあるかも確認し、無ければ著作権者に許諾をもらうことが条件になります。

生成AIで作成した画像や文章が【著作権侵害】になることはある?

昨今話題に上がることも多い生成AI。文章の作成などでChatGTPなどの生成AIを活用されている方もいらっしゃるかもしれませんが、こうした生成AIで作成した画像や文章には「著作権」は発生するのでしょうか?また生成AIを利用することで著作権侵害になることはあるのでしょうか?

生成AIで作られたコンテンツの著作権は認められない

結論、生成AI単体で作られたコンテンツの著作権は認められません。生成AIが作成したコンテンツは著作物の条件の1つである「思想または感情を伴ったものであること」に該当しないことがその理由です。しかし、ユーザーがプロンプトの工夫・編集などを行い表現された「創作物」である場合には、著作権が認められる可能性があります。

また昨今話題となっている「ジブリ風」「ディズニー風」などといった生成AI画像も、画風・作風には著作権が認められていないため、基本的に著作権侵害とはなりません。しかしあまりにも既存の著作物に似ていたり、著作物を参照して作成されていたりと、依拠性・類似性が認められる場合には著作権侵害となるケースもあります。

学習データの利用においては【著作権侵害】となることも

生成AIが学習するデータとして既存の著作物を利用した場合には、生成された画像が著作権侵害となる場合もあります。学習データに使われているのであれば、依拠性(既存の著作物をもとに創作・複製したかどうか)があると言えるのではないかという議論も進んでいます。しかし現時点では明確な基準がなく、最終的に裁判によって個別の作品ごとに判断がなされます。

SNS上で著作物を正しく使うには?

ここまで著作権侵害の例をご紹介してきましたが、著作物だからと言って一切利用できないという訳ではありません。以下2点に気を付ければ著作物を利用することが可能です。

1. 正しく引用する

画像や文章を転載する際は基本的に著作権者の許諾が必要ですが、正しく「引用」を行えば著作物を利用することができます。引用には文化庁が定義する4つのルールがあり、4つ全てに当てはまらないものは著作権侵害に当たる可能性があります。

  • ①他人の著作物を運用する必然性があること
  • ②カギ括弧をつけるなど、自分の著作物と運用部分とが区別されていること
  • ③自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること
  • ④出所の明示がなされていること

2. 権利制限規定に従って利用する

権利制限規定とは、一定の条件下で著作権者の許諾がなくても著作物を利用できることを定めたものです。上記でご紹介した「引用」も権利制限規定の1つです。他にも例えば、

  • ・私的使用のための複製(第30条)
  • ・営利も目的としない上演等(第30条)
  • ・学校その他の教育機関における複製等(第33条の3)

など多くの条件が設定されていますので確認してみましょう。

SNSでの著作権、侵害したらどうなる?

ここまでご紹介してきたとおり、著作物は条件を見たせば利用することができます。しかし、

  • ・著作者から許諾を得ていない
  • ・権利制限規定に該当しない

この条件に当てはまる場合には著作権侵害となり、民事及び刑事措置に発展する可能性があります。ただし著作権侵害は「親告罪」であり、権利者の告訴が無ければ起訴できないことに注意しておきましょう。

民事訴訟

著作権侵害罪の民事訴訟では以下のような請求が行われます。

  • ・侵害行為の差止請求
  • ・侵害行為によって生じた損害賠償請求
  • ・侵害行為によって得た利益の返還を求める不当利益返還請求
  • ・名誉回復措置請求

刑事訴訟

刑事訴訟では個人と法人、または著作権侵害の内容によって以下のように刑事罰が異なります。

個人の場合10年以下の懲役または1000万円以下の罰金
法人の場合3億円以下の罰金が科される場合がある

企業SNSでの著作権侵害を防ぐ方法

では、企業でSNS運用を行う際に、著作権侵害を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?今からできる対策を3つご紹介します。

1. 著作権フリーの画像や素材を使う

著作権侵害の可能性を考えると自身で作成することがもっとも安全ですが、都度作成することが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。この場合には著作権フリーの画像や素材を使うようにしましょう。

著作権フリーとは、加工の禁止や利用規約に沿った範囲内であればSNSやサイトでの許諾なしで利用ができる画像・素材のことです。著作権フロー画像・素材サイトはたくさんありますので、利用規約を確認の上使ってみましょう。

2. SNS投稿時のルールを定める

SNSでの著作権侵害に当たる行為や、正しい引用の方法などをルール化し、SNS担当者が正しく投稿できるようなマニュアルを作りましょう。ルールとしてきちんと明文化しておくことで著作権違反を防ぐことができます。

3. 投稿発信前のチェック体制を整える

SNS担当者が独断で判断して投稿してしまうと、著作権侵害に該当するような記載や表現を誤って投稿してしまう場合もあります。そのようなリスクを最小限にするためにも、必ず発信前に投稿チェックのフローを作り、投稿の不備がないかどうか確認しましょう。

4. SNS運用担当者向けにリテラシー研修を行う

著作権違反を防ぐためには、SNS運用に関わる担当者向けにリテラシー研修を行うことがおすすめです。ルールを定めたり、マニュアルを作ったりしても、きちんと使う人が理解していなければ著作権違反のリスクは避けられません。どのような行為が著作権違反にあたるのか、またどうすれば著作権違反を避けられるのかなどを伝えましょう。

SNSでの著作権リスクに気を付けて上手く活用しよう!

本記事では、SNSでの著作権や違反行為、また企業SNSで著作権侵害を防ぐ方法をご紹介いたしました。SNSの機能の多様化や生成AIの台頭などにより、著作権をはじめとした法律が次々と改定されています。企業として著作権違反のリスクを防ぐためにも、マニュアルの作成やSNS担当者研修などを徹底し、安全にSNSを活用していきましょう。

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