「仕事、育児、家事。3人自分が欲しくないですか?」
昨年ある企業が打ち出した広告に苦情が殺到しました。女性タレントの横に添えられた上記のコピーが「仕事も育児も家事も女性に押し付けている」というメッセージに受け取られ、批判が殺到したというものです。実はこうしたジェンダーに関する広告や投稿の炎上が企業で相次いでいます。性の価値観の多様化が進んでいる時代背景の中で、こうした内容は特に炎上が激化しやすく、企業のブランドイメージも下げかねません。今回はこうしたジェンダー炎上が起こる理由と炎上のパターン、企業が今取り組むべき対策を解説いたします。
ジェンダー炎上とは?
ジェンダー炎上とは、ジェンダーに関する配慮が足りず、先入観や偏見を含んだ発信をしてしまうことで起きる炎上のことです。日本はジェンダーギャップ指数が146か国中118位とジェンダー格差が根強く残っている国の一つで、企業の広告や発信でもジェンダーに関する配慮に欠けた内容が発信されてしまうことも多々あります。国内でも男女平等な社会の実現や多様な価値観に合わせた法改正が進んでいる背景もあるため、ステレオタイプの価値観と衝突し、炎上が大変起こりやすくなっています。
ジェンダー炎上が起こる理由
ではここで、ジェンダー炎上が起こる3つの理由をご紹介していきます。
1. ジェンダーに関する価値観の多様化
ここ10年ほどで「LGBTQ」といった言葉が使われるようになり、多様な性的志向が国内でも認知されるようになりました。著名人でもさまざまな性自認を公表する人が増え、性的マイノリティの方が生きやすい社会づくりが求められるようになりました。国内でも性に関する多様な価値観を持つ人が増えていることから、こうした炎上が起きやすくなっている背景があります。
2. 根強い性別に関する固定観念
ジェンダー格差が根強く残る日本では性別に関する固定観念がとても強く、意図がなくても炎上するような発信や投稿をしてしまうことがあります。ジェンダーに関する価値観が多様化している反面、根強く残る性に関する固定観念がぶつかり合い、炎上が激化してしまいます。
3. 偏った意見が拡散し、批判が殺到する
SNSでは同じ意見や価値観を持つ人々が集団を形成しやすいため、一部の人たちの偏った意見が強く拡散され、まるで「世間の意見」かのように見えてしまうことで炎上に拍車がかかってしまうことがあります。
日本のジェンダー問題に関して問題意識を持つ人が増えているのはもちろんなのですが、そのうちSNS上で実際に批判を行う人はほんの一部にすぎません。しかしこうしたSNSの特徴ゆえに炎上が激化しやすくなっているため、企業は発信に注意が必要なのです。
ジェンダー炎上の7パターン
現代のジェンダー炎上は大きく以下の7パターンがあります。それぞれチェックしていきましょう。
1. 性別役割の固定観念
「女性は家事・育児、男性は仕事」「管理職は男性、サポートをするのが女性」など男女の役割についての固定観念を含む表現は特に炎上しやすい傾向があります。
近年は性別役割を解消しようとする動きも増えてきています。しかし性別役割の考え方はそれでも根強く残り続けており、無意識に発信に反映されてしまっていることもあるため、発信前に再度確認を行う視点が重要です。
2. 多様な価値観を無視
先ほどもご紹介した通り、近年とても多様な性の価値観が認められています。例えばさまざまな家族を登場させる広告で男女と子どもの家族しか登場しなかった場合、「同性愛者のことが考慮されていない」といった批判を受ける可能性もあります。同性愛者や両性愛者、トランスジェンダー(心と身体の性が異なる)など、多様な価値観を持つ人にとって不快になる表現ではないかを確認する必要があります。
3. 性的な表現・描画
人目を引くために女性を飾り物として掲載する、身体の一部を強調して表現するなど、性的な表現が発信内容に含まれているものも炎上に繋がりやすいです。決して女性だけではありませんが、女性を性的に描いたような表現が用いられやすい傾向にあります。性的な表現・描画をすることで「性的にしか価値がない」というメッセージとも受け取ることができ、自尊心を傷つけてしまう可能性があります。
4. ルッキズムを助長するような内容
ルッキズムとは、外見や容姿で人を差別する思想や社会現象を指します。見た目や容姿に基準を作って、それに逸脱する人が悪ともとらえられる表現を行うことで、「ルッキズムを助長している」と炎上してしまうケースがあります。興味を持ってもらうために、あえて不安をあおることは広告や投稿で行われがちですが、受け手の状況をよく理解した上で発信を行わないと、多くの人を傷つける発信になってしまうこともあります。
5. 男性蔑視(ミサンドリー)
ジェンダー炎上というと女性に関する差別が多く取り上げられますが、必ずしも女性に限りません。昨年フリーアナウンサーが「男性の体臭が苦手」とSNSで投稿したことで「男性差別だ」と炎上しました。これまでは問題として取り上げられなかった男性をからかったりいじったりするような内容も、ここ数年男女平等が叫ばれる中で声が上がるようになってきました。
6. 萌え絵
「萌え絵」とは日本の漫画やアニメ、ゲームに特有な絵のことで、企業の広告や発信にこの「萌え絵」が使われることで炎上するケースもあります。萌え絵ならではの描写ではありますが、くびれや胸が強調されすぎた表現が多く、性的対象物として利用しているのではないかといった声が上がります。実際、萌え絵の炎上に関して「興味がない、どうでもいい」などの無関心層が半数以上で「反応が過剰」という意見も多くあります。しかし一部不快に感じる層もいるため、表現には注意が必要です。
7. 過去の発信が炎上
ここ数十年で社会におけるジェンダーの考え方・価値観は大きく変わりました。そんな中で、過去には炎上しなかったような発信やキャンペーンが炎上したり、問題になったりすることもあります。改めて発信内容が、現代の風潮に合っているのかどうかを再考する必要があります。
ジェンダー炎上投稿チェックリスト
ここまでジェンダー炎上のパターンや炎上の理由について解説してきました。このようなジェンダーに起因する炎上を防ぐためには、発信を行う前に「発信内容が適切であるか」を確認する必要があります。今回はジェンダー炎上を防ぐための投稿チェックリストをまとめてみましたので、投稿前に以下のポイントをチェックしてみてください。

予期せぬ炎上を防ぐために対策しておこう
ジェンダー炎上は意図せずに発信して炎上してしまうケースがとても多く、多くの企業でも炎上が起こっているテーマです。炎上の火種はどこに潜んでいるかわからないため、ご紹介した「ジェンダー炎上投稿チェックリスト」を活用して発信前のチェックを必ず行いましょう。既にSNS運用のルールやマニュアルがある場合は、上記のチェック項目を含めて、安全に発信ができる体制を整えていきましょう。
弊社が開催しているウェビナー「よくわかるSNSリスク対策入門~今、本当に求められる炎上に強い組織づくりとは?~」では、SNS運用を行う企業が行っておきたい基礎のリスク対策についてわかりやすく解説します。「SNS運用を行っているけど炎上が不安」と感じているご担当者様はぜひこちらもご活用ください!
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