企業の採用活動において、SNSの活用が加速しています。SNS採用は、コストを抑えながら効率的に母集団形成を行える方法として、大企業からベンチャー企業まで約6割の企業でSNS採用の導入が進んでいるというデータもあります。
しかし「SNS採用って本当に効果あるの?」「運用が大変そうだし、よくわからない」などの理由から、SNS採用導入に踏み切れていない企業様もまだまだ多いと思います。そのため本記事では、SNS採用のメリット・デメリットから、SNS採用導入の流れ、企業の成功パターンをご紹介していきます。ぜひ今後の採用活動にお役立てください。
目次
SNS採用とは?
SNS採用とはソーシャルリクルーティングとも言われ、SNSを使って行う採用活動のことを指します。SNS採用ではInstagramやX(旧Twitter)、TikTokなどのSNSを使って、母集団の形成や応募者の募集、ブランディング、就活生とのやり取りなどを行います。
就活生の世代である10~20代は生活の中心にSNSがあり日常的に利用をしていることから、若い世代の認知拡大を担うツールとなっています。SNS採用におけるSNS採用率に関してのデータはありませんが、ここ数年で大企業からベンチャー企業まで幅広い企業がSNS採用を取り入れはじめ、採用活動を行っています。
SNS採用が注目されるようになった理由
東海ビジネスサービスの調査によると、採用活動においてSNSを活用している企業は約6割であることがわかりました。多くの企業がSNS採用に目を付ける理由として「若者の情報収集の変化」があります。以前であれば会社について調べる際には検索エンジンを利用するのが一般的だったのですが、今の就活世代である10〜20代はSNSでも同様に情報収集を行うようになりました。
参考:トガル株式会社「Z世代定点観測調査 Z世代がSNSを活用して行う就職活動に関する調査」
それほど就活世代である若者にとってSNSは身近な存在であるため、企業アカウントの運用は今後の採用活動でも間違いなくプラスになり、欠かせない存在になると言えます。
SNS採用のメリット・デメリット
SNS採用には多くのメリットがある一方で、導入を検討する際にはデメリットも把握しておくことが重要です。以下に主なポイントを整理しました。
SNS採用のメリット
拡散力が強く、幅広い層にアプローチできる
SNSの拡散力よりフォロワー以外にも情報が届きやすくなり、企業の認知度の向上が期待できます。近年はアルゴリズムの変化や機能の追加により、フォロワー以外にもどんどんリーチできるようになってきているため、認知度が低い企業やSNSのフォロワーが少ない企業でも有効な手段になりえます。
就職・転職潜在層にもリーチできる
上記のようにSNSは幅広い層にアプローチできるため、就職・転職潜在層にもリーチできます。これから就活を控えている大学1年生、2年生なども見るため、就活を始める前から会社のことを知ってもらうチャンスになります。長期的に会社に興味を持ってくれる人を増やしたり、応募者増加につなげたりすることができます。
職場の雰囲気が伝わりやすく、ミスマッチを防げる
SNSでは、画像や動画を使って職場の雰囲気を伝えやすいのも特徴です。ホームページや採用ページはどうしても固いイメージになってしまいがちですが、SNSであれば職場紹介や社員インタビューなどをフランクに手軽に投稿することができるため、職場のリアルな雰囲気が伝わりやすく、就活生のミスマッチを防ぐことにも繋がります。
また最近の就活生の傾向として、働き方や社風に重きをおいて就職活動をしている人が増えているため、会社の雰囲気やどんな社員がどんな働き方をしているのか、という情報は特に注視している傾向にあります。SNSを使うことで、そうした就活生のニーズに応えやすくもなります。
コストを抑えながら運用できる
SNSはなんといっても無料で始められます。少子高齢化により人材の確保が難しくなっている昨今の採用活動において、求人サイトへの掲載はコストが大きく痛手に感じているご担当者様も多いかと思います。
広告を出稿する、インフルエンサーにPRを依頼するとなれば費用はかかりますが、そうでなければSNSは基本的にお金はかからないため、予算的な面で見てもメリットが大きいです。
双方向のコミュニケーションを行うことができる
SNSはコメント欄やDM、ストーリーズなどの機能を使って、双方向にコミュニケーションを行うことが可能です。従来の採用活動であれば、就活生側から何か知りたいことや聞いてみたいことがあったとしても、質問する機会が限られていましたが、SNSであれば気軽にストーリーズで質問をしたり、DMを送ったりすることができます。
そうした双方向のコミュニケーションを行えるようになることで、会社をより知ることができ、就活生に興味を持ってもらいやすくなります。
SNS採用のデメリット
SNS採用はメリットがとても多く、ぜひ導入を検討していただきたい施策ですが、同時にデメリットもあります。併せて確認をしておきましょう。
即効性がなく、効果が出るまでに時間がかかる
SNSはコストを抑えられる一方で、効果が出るまでには継続的な運用が必要です。アルゴリズムの変化により、以前に比べてアカウントが小さくてもフォロワー外に拡散されやすくはなりましたが、最終的な目的である「応募者増加」「求める人材の獲得」にはすぐに繋がりません。投稿を継続して行っていくことでアカウントも大きくなり、徐々に認知が取れるようになり、より会社の求める人材が集まってきやすくなります。
継続しないと効果が出にくい
上記の通り、SNSは効果が出るまでに時間がかかります。そのため継続して投稿を続けていくことがとても重要です。定期的に投稿を行うことで目に触れる機会を増やすこともできますし、「価値のあるコンテンツを継続して投稿しているユーザー」としてSNS側からの評価も高くなり、オススメされやすくなります。毎日投稿するのが難しくても2~3日に1回などの頻度で投稿していくことで接触頻度を増やせるので、まずは継続して投稿していきましょう。
炎上リスクが伴う
SNSを運用するにあたって気を付けたいのが炎上リスクです。SNSの利用が増えている今、SNSでの炎上も同時に大変増えています。企業SNSでの投稿が炎上の火種になってしまうことはもちろんですが、社員や学生の悪い口コミやコメントがSNS上で拡散されて炎上してしまうといったケースもあります。
一度炎上が起こってしまうとネットニュースで取り上げられて、瞬く間に拡散されてしまい、ブランドイメージの低下や応募者の減少などに直結してしまうため、事前にできる対策を行っておくことが大切です。
SNS採用を始める5つのステップ
では次に、SNS採用を始める5つのステップをご紹介していきます。
1. ターゲットを設定する
まずはターゲットの設定を行いましょう。ペルソナを具体的に描くことで、どのSNSを選ぶべきか、どのような投稿が響くのかを明確にできます。SNS運用を始める際はペルソナ像を明確にし、そのペルソナであればどんなSNSを使いどんな情報収集を行うのか、という視点でSNSの選定や投稿の作成を行っていきましょう。
2. SNSプラットフォームを選ぶ
ターゲットの設定が出来たら、使うSNSを選定しましょう。これも、ターゲットがよく使うSNSは何か?を基準に選定をしていくことが大切です。ここで各SNSのユーザー情報や特徴をご紹介します。
Instagramは国内ユーザー数6600万人(2024年12月時点)で10~20代の女性を中心に利用されている、画像や動画での訴求が強みのSNSです。リールを使ってフォロワー外にも認知を広げ、フィード投稿でより深く会社を知ってもらい、ストーリーズやDMでコミュニケーションを取る、というように段階的に活用できるため、Instagram単体でも採用活動が完結できてしまうほどさまざまな機能が備わったSNSです。そのためまずはInstagramから導入を始める企業様も多いです。
X(旧Twitter)
X(旧Twitter)は国内ユーザー数6700万人(2024年12月時点)で20代を中心に幅広い層に利用されているSNSです。短文で手軽に投稿できるのが魅力で、就活生の約7割がX(旧Twitter)を使って業界研究を行っているというデータもあります。他のSNSに比べ「リツイート」や「いいね」によって一気に拡散されるのが特徴なので、最新情報やトレンドをいち早くキャッチするために使われます。
そのためX(旧Twitter)では、企業の最新のお知らせやインターンシップ・会社説明会などの情報を発信して、広く情報を認知するために活用するのが良いでしょう。
YouTube
YouTubeは国内ユーザー7120万人(2024年12月時点)でとても幅広い層に利用されているSNSです。SEOにも強いため、指名検索された際にYouTubeにアクセスされる可能性もあります。また2021年から利用が開始されたYouTubeショートも人気で、フォロワー以外にも広く認知を広げられるリールやTikTokなどと同じような機能を持っています。
YouTubeショートで認知を広げるのはもちろん、TikTokやInstagram、X(旧Twitter)で会社のことを知った就活生がさらに深く会社のことを知るためにYouTubeを使う場合が多いので、他のSNSと併せて運用するのがおすすめです。
TikTok
TikTokは国内ユーザー数2700万人(2024年12月時点)で、10~20代の若い世代を中心に利用されているSNSです。こちらは他のSNSに比べると若い世代の利用率が特に高いのが特徴です。フォロワー外にも、興味関心のありそうな潜在層ユーザーにどんどんレコメンド(おすすめ)されていく仕組みなので、広く認知拡大をしたい場合に使うのが有効です。TikTokは認知拡大に特化したSNSでもあるので、他のSNSと併用しながら運用していくことがおすすめです。
LINE
LINEは国内ユーザー数9700万人(2024年12月時点)で幅広い世代で使われているSNSです。1対1のコミュニケーションに特化しており、開封率も高いため、応募の手続きや応募後・内定後などのフォローに利用している企業が多いです。他のSNSで認知や関心を高めてLINEを追加してもらい、さらに詳しい情報発信ややり取りを行っていきましょう。
3. コンテンツを準備する
SNSプラットフォームが決まったらコンテンツの準備をはじめていきましょう。とはいえ、どんな投稿をしたらいいのか迷ってしまうという方も多いと思います。なのでまずは競合他社の投稿をリサーチしたり、新卒社員からどんな情報が欲しかったかなど話を聞いたりして、投稿アイデアをリスト化しましょう。
4. 投稿スケジュールを作る
SNS運用にあたり継続して投稿をしていくことはとても重要です。効果が出るまでに時間がかかるものですが、すぐに効果が出ないからと言って投稿をやめてしまうのはもったいないです。毎日ではなく2~3日に1回でも良いので、無理なく投稿を続けることでユーザーの目に触れる機会が増えたり、リールや発見欄でおすすめされやすくなったりしていきます。そのためまずは、無理ない頻度で投稿スケジュールを定め、継続して投稿を続けていきましょう。
5. 運用ガイドラインを整備する
SNS運用を始めるにあたって、SNS運用ガイドラインを作成しておきましょう。SNSガイドラインには、以下のような内容をまとめておきます。
- ・してよい投稿としてはいけない投稿
- ・投稿時のチェック項目
- ・DMやコメントに対する対応手順
- ・万が一炎上が起こった際の対応フロー
「起こってから考えれば良いのでは?」と思ってしまいがちですが、最新のSNSでの炎上は瞬く間に拡散し、ネットニュースになり、ブランドイメージの低下や応募者の減少、内定辞退などに繋がってしまいます。こうしたガイドラインを作っておくことで、もし炎上が起こってしまってもすぐに対応でき、炎上の拡大を最小限にとどめることができます。
【厳選5パターン】SNS採用の成功事例
ではここで、SNS採用の成功事例5パターンをご紹介していきます。これからSNS採用を行う上での参考にしてみてください。
三菱商事採用公式アカウントより引用
大企業は就活生からの認知も既に取れているため、比較的少ないSNS媒体で採用活動を行っているケースが多いです。Instagramはリールでの認知拡大から投稿やストーリーズでの興味付け、ストーリーズでのコミュニケーションなどを一貫して行えるSNSなので、認知がある程度取れており、SNS運用にコストをあまりかけたくないという企業はInstagramのみの運用がおすすめです。
- ◆運用方法|Instagramのフィード投稿、リール、ストーリーズを活用
フィード投稿 | 社員インタビュー(休日の過ごし方、就活秘話など)や業務内容、インターン等の募集 |
リール | 社員インタビュー、社内イベントの紹介、業務内容紹介 |
ストーリーズ | フィード投稿・リールのシェア |
Instagram×YouTube
オープンハウス採用アカウントより引用
InstagramとYouTubeの組み合わせも、比較的認知の取れている企業に多いパターンです。フォロワー外へもリーチするInstagramリールを使って認知を広め、さらにInstagramの投稿やYouTubeを使うことでより深く会社のことを理解してもらうことができます。SNSでより深く会社のことを理解してもらうことで、応募者を増やすことはもちろん、選考〜入社後のギャップを防ぎ内定辞退を防ぐことにも繋がります。
- ◆運用方法
- Instagram|フィード投稿、リール、ストーリーズを活用
フィード投稿 | 社員インタビュー(休日や長期休暇の過ごし方、業務内容、就活秘話など)、内定者インタビュー、オフィス紹介 |
リール | 社員インタビュー、ショートドラマ風動画 |
ストーリーズ | 投稿のシェア、質問箱の回答、インターン・エントリー情報の発信 |
- YouTube|長尺動画とショート動画を活用
長尺動画 | 社員インタビュー、社内イベントの紹介、仕事1日密着、オフィス紹介 |
ショート動画 | ショートドラマ風動画 |
Instagram×X×YouTube
サイバーエージェント新卒採用より引用
InstagramとX、YouTubeの組み合わせも比較的に大きな企業に多いパターンです。InstagramやYouTubeでは社員インタビューや業務内容などを紹介し、インターンやエントリー情報を拡散力の強いXでさらに拡散する、というように切り分けて運用しているケースです。Xは社員個人のアカウントで運用しているケースも多く、個人の見解で発信するためファンが付きやすくなります。SNS運用に割けるリソースのある企業にはこの組み合わせがおすすめです。
- ◆参考アカウント|楽天グループ株式会社(Instagram/X/YouTube)、株式会社U-NEXT HOLDINGS(Instagram/X/YouTube)、サイバーエージェント (Instagram/X/YouTube)
- ◆運用方法
- Instagram|フィード投稿、リール、ストーリーズを活用
フィード投稿 | 社員インタビュー(入社理由、1日の業務スケジュール、就活秘話)、内定者インタビュー、社内イベント紹介、オフィス紹介 |
リール | 社員インタビュー、就活あるある、仕事1日密着、オフィス紹介 ※楽天グループ株式会社はリール使用なし |
ストーリーズ | 投稿のシェア、質問への回答、インターン・エントリー情報の発信 |
- X|インターンや採用情報の発信、InstagramやYouTubeでの投稿シェア
- YouTube|長尺、ショート動画を活用
長尺動画 | 社員インタビュー、内定者インタビュー、事業紹介、福利厚生、就活テクニック(面接対策、企業研究、自己分析など)、オフィス紹介 |
ショート動画 | 長尺動画の切り抜き、オフィス紹介、就活テクニック、社員1日密着 |
Instagram×TikTok
【採用】ReBORN GROUP(株)|常識で勝負しないより引用
InstagramやTikTokはどちらも認知拡大に強いSNSなので、ベンチャー企業など「まずは会社を知ってもらうところから始めたい」という企業に特におすすめです。TikTokではより認知のとれる1日の仕事ルーティンや就活のテクニックなどラフな動画を発信し、Instagramではより業務に近い内容を発信することで、興味関心を少しずつ高めていくことができます。
- ◆運用方法
- Instagram|フィード投稿、リール、ストーリーズを活用
フィード投稿 | 社員インタビュー、社内イベント紹介 |
リール | 社内イベント紹介 |
ストーリーズ | 投稿のシェア、社内の様子、社内イベントの紹介、インターン・エントリー情報の発信 |
- TikTok|社内の様子、社内イベントの紹介
Instagram×TikTok×X×YouTube
Evant株式会社|採用チームより引用
Instagram、TikTok、X、YouTubeさらに公式LINEもフルに使って採用活動を行っているケースです。先ほどもご紹介をした通り、それぞれの媒体に強みがあり、SNSの数だけ流入数も増えるので、上手く活用できれば多くの応募者を集めることもできます。5つのSNSを運用するとなるとかなり運用コストがかかるため、採用SNSにある程度時間や労力をかけられる企業にはおすすめです。
フィード投稿 | 社員インタビュー(1日仕事ルーティン、就活秘話)、内定者インタビュー、就活テクニック |
リール | 社員インタビュー、仕事1日密着、就活テクニック |
ストーリーズ | 投稿のシェア、質問箱の回答 |
- X|個人アカウントでの日常発信
- TikTok|社員インタビュー、就活秘話
- YouTube|社員インタビュー、就活テクニック
SNSを積極的に活用して採用を成功させよう!
本記事ではSNS採用のメリットやデメリット、SNS採用導入の流れ、企業の成功パターンなどをご紹介してきました。SNS利用が急激に増える中、企業の採用活動にも今後必ず役立つツールとなるはずです。ぜひ今回ご紹介した導入の流れや成功パターンを参考に、SNS採用をスタートさせてみてください。
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